カテゴリ: INSIGHTS|3D技術 × 建築DX
著者: 株式会社Across360 INSIGHTS編集部(監修:自社3DGS技術検証チーム)
Matterportの最有力の代替候補は、月額サブスクが不要で「作り切り配信」できる次世代3D技術「3DGS(3D Gaussian Splatting)」です。 当社の技術検証では、1シーンあたりの制作にかかる計算コストは1ドル前後で、継続課金が発生しません。
ただし、採寸・間取り図・ドールハウス表示といったMatterportの実務機能は、現時点では3DGSが追いついていない領域もあります。この記事では、「Matterportの代替を探している」方に向けて、自社の実測データをもとにコスト・品質・機能を正直に比較し、どんな場合に何を選ぶべきかを整理します。
結論:Matterportの代替を「コスト構造」で探すなら3DGS
最初に要点をまとめます。
| 比べる軸 | Matterport | 3DGS(次世代3D技術) |
|---|---|---|
| 課金 | 月額サブスク(継続課金) | 作り切り配信(サブスク不要) |
| 1シーンの計算コスト | サブスクに内包 | 約1ドル前後(当社実測) |
| 画質・没入感 | 十分高品質 | フォトリアルで自由視点 |
| 採寸・間取り・ドールハウス | 標準機能 | 自前実装が必要(弱点) |
| ガラス・鏡の多い空間 | 比較的安定 | 苦手(要対策) |
「毎月のサブスク費用をやめたい」「データを自社で持ちたい」という動機であれば、3DGSは有力な代替です。一方、採寸や間取り図が業務に不可欠なら、Matterportの機能優位は依然として大きい——これが正直な結論です。
そもそも3DGSとは?——「動画を撮ってアップロードすると3D空間になる」
3DGS(3D Gaussian Splatting)は、複数の写真や動画からフォトリアルな3D空間を自動生成するAI技術です。2023年に研究発表されて以降、わずか数年で不動産・建築業界の実装が一気に進みました。
従来の3Dモデリングが面を1つずつ作り込む手作業だったのに対し、3DGSは撮影データをAIが解析し、「ガウス分布」と呼ばれる粒の集合として空間を再構成します。ひとことで言えば、「動画を撮ってアップロードすると、数十分後に歩き回れる3D空間のURLが出てくる」技術です。
当社の技術検証パイプラインでは、撮影した動画をアップロードしてから約1時間で閲覧用URLが発行できる状態を自動化しています(屋内1部屋・GPU学習で約45分)。姿勢推定にはGLOMAPを用いており、従来手法のCOLMAP比で10〜50倍速で処理できます。
なぜ3DGSが「Matterportの代替」と言われるのか——3つの理由
理由1:月額サブスクが発生しない(最大の経済的優位)
Matterportはクラウドホスティングの月額サブスクが前提で、物件が増えるほど毎月の固定費が積み上がります。 「3D化はしたいが、毎月の課金がネックで踏み切れない」という声は、私たちが現場でよく耳にするものです。
3DGSの最大の優位は、「作り切りで配信できる」こと。1シーンを生成してしまえば、あとはWeb配信(CDN)のコストだけで、シーン単位の継続課金は発生しません。当社の技術検証では、屋内1部屋(写真約300枚)の生成にかかる計算コストは約0.83ドル、フロア全体の中規模でも4〜8ドル程度です。これは月額サブスクと比べて、コストの「構造そのもの」が違います。
※上記は当社の技術検証パイプライン(A100/H100 GPUでの学習)における実測・見積値です。サービスとしての提供価格ではありません。
理由2:画質と没入感がフォトリアル
Matterportが「撮影ポイント間をクリックでジャンプ移動」する方式なのに対し、3DGSは空間内を滑らかに歩き回る自由視点を提供します。光沢や質感の表現も自然で、その場に立っているかのような没入感が出ます。
しかも配信は軽量です。当社検証では、圧縮形式(.spz、約10倍圧縮)を使い、iPhone 13 Pro Maxで400万ガウシアンを42fpsで表示できることを確認しています。閲覧環境もブラウザ対応が進み、WebGPU対応ブラウザが全体の約85%をカバー(非対応環境はWebGL2でフォールバック)しています。
理由3:データを自社で保有・編集できる
3DGSはオープンソースを基盤に発展しており、生成したデータを自社で持ち、機能を自前で追加できる自由度があります。Matterportのクローズドなプラットフォームに対し、「データとビューアーを自分たちでコントロールしたい」というニーズに応えられるのが3DGSの構造的な強みです。
撮影品質で差がつく——なぜプロは6Kシネマカメラを使うのか
「スマホで撮るだけ」と紹介されることの多い3DGSですが、商用納品レベルの安定品質を出すには撮影品質が決定的です。当社が検証で使用しているのは、ニコンとREDが共同開発した6Kシネマカメラ「NIKON ZR」(2025年10月発売・約2,199ドル/買い切り)です。
なぜ専用機材が効くのか。技術的な理由は明確です。
- 3DGSはモーションブラーに極めて敏感:ブレた数フレームがあるだけで、AIの姿勢推定が破綻します
- 露出の手動固定が必須:スマホの自動露出が動くと、同じ壁が場所によって明るさが変わり、3DGSが「色違いの別物」と誤って学習してしまいます
- 低照度性能・6K解像度:室内の暗部や細部まで安定して捉えることが、納品品質を支えます
当社の運用基準では、オーバーラップ70〜80%・露出固定・シャッター1/500秒以上・f8〜11・低ISO・1部屋あたり200〜500枚以上を撮影のベストプラクティスとしています。
つまり、スマホでも「それなりに見える」3DGSは作れますが、お客様に見せる商用品質を安定供給するには撮影技術がものを言う。ここは、写真撮影をルーツに持つAcross360が最も強みを発揮できる領域です。
正直な弱点——Matterportに軍配が上がる3つの領域(反証)
代替を検討する以上、3DGSの弱点も正直にお伝えします。ここを知らずに乗り換えると失敗します。
弱点1:ガラス・鏡・反射面が苦手
3DGSの最大の弱点は、ガラス・鏡・透明物・強い反射面です。鏡を「奥に続く空間」と誤って学習してしまうことがあります。ショールームや住宅展示場はガラス・鏡が多く、用途と弱点が正面衝突する点には注意が必要です(撮影時のマスキングや後処理で緩和は可能です)。Matterportはこうした面が比較的安定しています。
弱点2:採寸・間取り図・ドールハウス表示
Matterportの「採寸」「間取り図の自動生成」「ドールハウス表示(建物全体の俯瞰)」は、3大独自機能です。3DGSでこれらを実現するには自前の追加実装が必要で、すぐには置き換えられません。「施主に寸法を答えたい」「間取り図が自動で欲しい」業務では、Matterportの優位が続きます。
弱点3:均一な無地の壁
特徴点の少ない真っ白な無地の壁などは、AIが空間構造を掴みにくく、生成が不安定になることがあります。
では、工務店・建材メーカーは何を選ぶべきか
ここまでを踏まえた、現実的な使い分けです。
| あなたの状況・ニーズ | おすすめ |
|---|---|
| 毎月のサブスク費用をやめたい/データを自社保有したい | 3DGS |
| フォトリアルな没入感で施工事例を見せたい | 3DGS |
| 採寸・間取り図が業務に不可欠 | Matterport |
| ガラス・鏡の多いショールームを3D化したい | Matterport |
| 今すぐ実務で使える形で、写真とツインを両方ほしい | AcrossVIZ(Matterport活用) |
ここで大切なのは、「Matterportが古い」という話ではないということです。Matterportは採寸・間取り・ドールハウスといった実務機能で今も強く、私たちもサービスで活用しています。
Across360では、この2つを二層で捉えています。
- AcrossVIZ:Matterportを活用し、一度の撮影で「竣工写真」と「歩けるデジタルツイン」を同時に制作する、今すぐ使える実用ライン
- 次世代3DGS:サブスク不要・データ自社保有を特徴とする、「次に来る本丸」として検証を進めている領域(現在はデモ・検証段階)
「今すぐ実務で使うもの」と「これから来るもの」を分けて、お客様の状況に合わせてご提案しています。
よくある質問(FAQ)
Q. Matterportの代替はありますか?
A. 最有力の代替候補は、月額サブスク不要で作り切り配信できる次世代3D技術「3DGS(3D Gaussian Splatting)」です。当社の技術検証では1シーンの計算コストは約1ドル前後で、継続課金が発生しません。ただし採寸・間取り図・ドールハウス表示はMatterportに優位があります。
Q. 3DGSはMatterportより安いのですか?
A. コストの「構造」が異なります。Matterportは月額サブスク(継続課金)、3DGSは作り切り(1シーンの計算コストが当社実測で約0.83ドル〜、以降の継続課金なし)です。物件数が増えるほど、作り切りの経済的優位が効いてきます。
Q. スマホで撮るだけで使える品質になりますか?
A. 簡易的なものは作れますが、商用納品レベルの安定品質には撮影技術が決定的です。3DGSはモーションブラーや露出変化に弱いため、露出固定・適切なシャッター速度・十分な撮影枚数が必要です。当社では6Kシネマカメラと運用基準でこれを担保しています。
Q. 3DGSの弱点は何ですか?
A. ガラス・鏡・反射面が苦手なこと、採寸・間取り図・ドールハウス表示が標準機能ではないこと、均一な無地の壁が不安定なことです。これらが重要な用途では、Matterportの方が適しています。
Q. 結局、工務店はどちらを選べばいいですか?
A. 採寸や間取り図が業務に不可欠ならMatterport、サブスクをやめたい・没入感を重視するなら3DGSです。「今すぐ写真とツインを両方ほしい」なら、Matterportを活用したAcrossVIZが実用的な選択肢になります。
まとめ
- Matterportの最有力の代替は、サブスク不要で作り切り配信できる次世代3D技術「3DGS」
- 3DGSの強みは①月額課金が不要 ②フォトリアルな自由視点 ③データの自社保有・編集の自由度
- 当社の技術検証では、1シーンの計算コストは約1ドル前後、アップロードから約1時間で閲覧URLを発行
- ただし採寸・間取り・ドールハウス・ガラス面はMatterportに優位がある(正直な弱点)
- 「Matterportが古い」のではなく、今使える実用ライン(AcrossVIZ)と次に来る本丸(3DGS)を二層で捉えるのが現実的
「毎月のサブスクをやめたいのか」「採寸機能が要るのか」——自社の使い方を起点に選ぶのが、後悔しない技術選定です。
自社の物件・用途ではどちらが合うか、無料でご相談いただけます。
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