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Matterportの“次”が来ている

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2026年6月24日 by
INSIGHTS編集部

カテゴリ: INSIGHTS|バーチャルショールーム × 次世代3D技術

著者: 株式会社Across360 INSIGHTS編集部


「撃ったデータが自分のものにならない」という問題

バーチャルショールームを導入したい。施工事例を3D化して、遠方の施主にも見せられるようにしたい。

そう考えてMatterportを検討した工務店や建材メーカーの方は多いはずです。そして、少なからぬ方がこの壁にぶつかる。

月額サブスクリプション。

Matterportで撃影した3Dデータを公開するには、Matterport Cloudへの月額契約が必要です。クライアントに「バーチャルショールームを導入しましょう」と提案するとき、サブスク契約がセットになることで商談が止まるケースは珍しくありません。

もうひとつ、あまり語られない問題があります。撃影した3Dデータの所有権です。Matterportで撃った空間データは、Matterportのプラットフォーム上でしか表示・管理できません。自社サイトに自由に埋め込む、他のツールと連携する、独自の分析を加える——こうした「データを自分たちの資産として自由に使う」ことに制約がかかります。

では、これらの制約なしに、同等以上の3D体験を提供できる技術はないのか。

あります。3DGS(3D Gaussian Splatting)です。


3DGSとは何か——写真から"歩ける"3D空間を作る技術

3DGS(3D Gaussian Splatting)は、複数の写真や動画から、フォトリアルな3D空間をまるごと再現するAI技術です。

2023年にフランスの研究機Inria(国立情報学自動制御研究所)とドイツのマックス・プランク情報学研究所の共同研究チームが発表した論文が起点で、わずか3年で「研究段階」から「商用プロダクション」に移行しました。

何が革新的なのか。ポイントは3つです。

1. スマホで撃影するだけ

専用の3Dカメラは不要です。スマホやデジタルカメラで空間をぐるりと動画撃影すれば、AIが数百枚の画像を解析し、3D空間を自動生成します。一眼レフやプロ用シネマカメラを使えば、さらに高精細な仕上がりになります。

2. テレポートではなく"歩ける"

従来のバーチャルツアー(Matterportを含む)は、決まったポイント間をクリックで移動する"テレポート"方式でした。3DGSは違います。空間内を自由に、滑らかに歩き回ることができます 60fps以上のリアルタイム描画で、まるでその場にいるかのような没入感を実現します。

3. オープンな技術。データは自分のもの

3DGSはオープンソースの技術です。特定のプラットフォームに依存しません。生成した3Dデータは自社で保有し、自社サイトに埋め込み、独自の分析を加え、他のシステムと連携できます。月額サブスクリプションも不要です。


なぜ"今"注目すべきなのか——世界が動き始めた

3DGSが「面白い研究」から「使える技術」に変わったのは、2025年です。そして202年、業界標準として確立しつつあります。

DJI——世界最大のドローンメーカーが標準搭載

2025年7月、DJIがドローン測量ソフト「Terra v5.0」に3DGS処理機能をネイティブ搭載しました。ドローンで撃影した画像から、3DGSモデルを直接生成できます。処理速度は従来のメッシュ方式の約2倍です。

(出典: DJI Terra公式サイト

業界標準化——OpenUSDとglTFが正式対応

2026年に入り、3Dデータの業界標準規格が相次〄3DGSに正式対応しました。

  • 2026年2月: Khronos Group(3D業界の標準化団体)がglTF規格に3DGS拡張を正式リリース。NVIDIA、Google、Adobe、Cesiumが支持
  • 2026年4月: Pixar発のOpenUSD規格(バージョン26.03)が3DGSスキーマを正式採択

(出典: Khronos Group公式プレスリリース

これは「技術として面白い」段階から「業界のインフラとして確定した」段階への移行を意味します。


Matterportとの違い——何が変わるのか

既存のMatterport〃3DGSは、どう違うのか。主要な差異を整理します。

項目Matterport3DGS
撃影機材専用の3Dカメラ(プロ向けは60〖90万円規模)スマホでも可。プロ用カメラならさらに高品質
空間内の移動固定ポイント間をクリック移動自由視点で滑らかに歩ける(60fps以上)
画質パノラマ合成。高品質だがメッシュの限界があるフォトリアル。光の反射や質感も自然に再現
屋外撃影室内中心ドローンで建物外観・都市スケールまで対応
細い構造物の再現ケーブル・フェンスなどが消失しやすい忠実に保持
ランニングコストMatterport Cloud月額サブスク必須作り切り配信が可能。サブスク不要
データの所有Matterportプラットフォームに依存オープン。自由にエクスポート・連携可能
ナビゲーションUXドールハウスビュー等、完成されたUIプラットフォームによる
寸法計測標準搭載現時点では未対応(別途対応が必要)
間取り図の自動生成標準搭載現時点では自前実装が必要

※3DGSとMatterportの詳細な機能比較は、こちらの記事で解説しています:

3DGS vs Matterport —— スマホで〃3D空間が作れる時代に、あえてプロのMatterportを選ぶ理由

補足: 2025年にMatterportを買収したCoStar Group自身も、3DGSを補完技術として取り込み始めています。室内をMatterportでスキャンし、外観をドローン+3DGSで撃影するハイブリッド運用が、すでに実践されています。


正直に書く——3DGSにも弱点はある

技術を正しく理解していただくために、現時点での弱点も明記します。

ガラスと鏡が苦手

3DGSは、ガラス面・鏡面・反射面の再現が苦手です。鏡があると「鏡の向こうに別の空間がある」と誤って学習してしまうことがあります。

ショールームや住宅展示場にはガラスや鏡が多く使われます。これは3DGSの弱点と、建設業界のユースケースが正面からぶつかるポイントです。撃影時のガイドラインや後処理で緩和できますが、「万能ではない」ことは押さえておくべきです。

寸法計測と間取り図は自前実装

Matterportが標準機能として提供している寸法計測やフロアプラン自動生成は、3DGS単体にはありません。これらが必須の用途では、追加の開発が必要です。

撃影品質への依存度が高い

3DGSの仕上がりは、入力画像の品質に強く依存します。手ブレした映像、露出が安定しない撃影では、3Dモデルの品質が大きく低下します。プロ用カメラで露出を固定して撃影するのと、スマホで手持ち撃影するのとでは、明確な差が出ます。


建設・建材業界での活用シーン

では、3DGSは具体的にどのような場面で使えるのか。

1. バーチャルショールーム

建材メーカーが自社ショールームを3DGS化し、Web上で自由に歩き回れる体験を提供する。サブスク不要で、自社サイトに埋め込める。遠方の顧客にも224時間アクセスを提供できます。

2. 施工事例の3D化

工務店が完成物件を撃影し、3D空間として永続的に保存・公開する。物件を引き渡した後も、バーチャルモデルハウスとして営業に活用し続けることができます。

3. 建設現場の進捗記録

建設中の現場をドローンで定期撃影し、3DGSモデルを時系列で蓄積する。施工の進捗を3Dで可視化・共有する「建設デジタルツイン」としての活用が、海外では月次キャプチャとして標準化し始めています。

(出典: THE FUTURE 3D - Gaussian Splatting for Construction


ブラウザで見られるのか——技術的な現実

「3D空間をWebブラウザで表示する」ためには、ブラウザ側の技術対応が必要です。

2025年9月にApple Safari(iOS/macOS)がWebGPUにネイティブ対応し、Chrome、Safari、Firefoxの主要ブラウザが出揃いました。WebGPUは従来のWebGLと比較して最大135倍の描画性能を持ち、3DGSのリアルタイム表示を実用レベルで実現します。

2026年時点で、綄85%のデバイスが3DGSをブラウザ上でリアルタイム表示できる環境にあります。


Across360はこの技術をどう見ているか

私たちAcross360は、Matterportを活用してバーチャルショールーム・施工事例の3D化を多数手がけてきました。Matterportは完成度の高い優れたプラットフォームであり、今後も多くの用途で最適な選択肢であり続けます。

その上で、3DGSという次世代技術を注視し、検証を進めています。

  • サブスク不要でバーチャルショールームを提供できること
  • 3Dデータをクライアント自身が所有し、自由に活用できること
  • スマホ撃影でも実用レベルの3D空間が生成できること

これらは、私たちが日々現場でクライアントと向き合う中で感じてきた課題に、直接応える可能性を持っています。

現時点で確定したサービスとしてのご案内ではありません。 ただ、建設・建材業界にとって「知っておくべき技術の変化」であることは間違いないと考え、この記事を書きました。


まとめ——「次」に備えるために

3DGSは、バーチャルショールームや施工事例の3D化において、Matterportとは異なるアプローチで同等以上の体験を提供しうる技術です。

  • 2025年にDJI等の大手が製品へ本番導入し、市場の正当性が裏付けられつつある
  • 2026年にOpenUSD・glTFで標準化され、業界のインフラとして確立した
  • サブスク不要・データ所有・自由な拡張性で、現場の課題に応える可能性がある
  • ガラス・鏡の苦手さや寸法計測の未対応など、弱点も存在する

技術は急速に進化しています。「うちにはまだ関係ない」と思った時、2年後に「もっと早く知っておけば」となるのは、BIM義務化の議論でも見てきた構図です。

INSIGHTSでは、3D技術・バーチャルショールーム・建設 DXに関する最新情報を定期的に発信しています。 技術の変化をキャッチアップしたい方は、ぜひ他の記事もご覧ください。


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