「BIMは必要になる。でも、何から始めればいい?」
2026年4月、BIM図面審査の運用が始まった。今のところ任意だが、2029年春にはBIMデータ審査の原則化が見込まれている。
この事実を前にして、多くの工務店経営者が同じことを感じているはずだ。
「BIMは必要になる。それは分かっている。でも、自社にBIMソフトを入れる余裕はない。外注するにも、数十万円は重い。何から手をつければいいのか、わからない。」
この問いに対する答えが、意外な場所にある。建築模型だ。
制度の詳細は、こちらにまとめている
本記事では、BIMの制度そのものの説明は最小限にとどめる。
- 制度の全体像を知りたい方: 2026年BIM確認申請 完全ガイド — 2026年の任意制から2029年の原則化まで、ロードマップの全容
- 費用を比較したい方: BIM外注の費用相場 — 自社導入と外注の5年間トータルコスト分析
ここでは、「BIM導入の第一歩をどう踏み出すか」に絞って話を進める。
ソフトを買う前に、模型を頼む——という発想
BIM導入と聞くと、多くの人がこう考える。
- Revitを買う(年間48万円〜)
- 高性能PCを用意する(30万円〜)
- 社員に半年かけてトレーニングを受けさせる
初年度90万円。2名体制なら170万円超。これが「BIM導入」の一般的なイメージだ。
だが、「BIMソフトを自社で使う」ことだけがBIM導入ではない。
もうひとつの道がある。BIMデータを外注で「受け取る」という方法だ。
そしてその入口として、最もハードルが低いのが建築模型である。
模型を頼んだ時点で、BIMの土台はできている
最近のワンストップサービスでは、模型を作る過程で3Dデータを生成する。この3Dデータは、模型の原型であると同時に、AR体験やBIMデータの土台にもなる。
つまり、模型を注文した時点で、BIMへ進む準備はすでに整っている。
| ステップ | 内容 | 費用(税別) |
|---|---|---|
| まず試す | スタディ模型(3Dプリント) | 49,800円 |
| プレゼンを強化 | 模型+AR(施主向け実寸体験) | 79,800円 |
| BIMを体験する | 模型+AR+スタディBIM(LOD200・IFC形式) | 128,000円 |
| 確認申請に使う | BIM Express(LOD300・確認申請対応) | 198,000円〜 |
| 全部まとめる | フルセット | 278,000円 |
段階的に追加しても、一括で注文しても総額は同じだ。
ここで重要なのは、各ステップが独立しているのではなく、同じ3Dデータの上に積み重なっているということだ。模型を作った3DデータがスタディBIM(LOD200)になり、さらに詳細化してBIM Express(LOD300)になる。
模型屋に頼んだ模型と、BIM代行に頼んだBIMで形が違う——そんなことが起きない。すべてが一本の線でつながっている。
「まず1件だけ」が、最もリスクの低い始め方
BIMを始めるにあたって、全棟一斉に切り替える必要はない。
2029年の原則化まで、まだ時間がある。今はBIM図面審査が任意の段階だ。今なら「試す」ことができる。
提案したいのは、こういう進め方だ。
ステップ1——模型だけ試す(49,800円)
次の施主プレゼンで、3Dプリント模型を使ってみる。施主の反応が変わるかどうか。まずはここだけ見る。BIMのことは、この段階では考えなくていい。
ステップ2——ARを追加する(79,800円)
模型の効果を実感したら、次の案件ではAR付きにしてみる。建築予定地での実寸体験が、施主の意思決定を後押しする。
ステップ3——スタディBIMを受け取る(128,000円)
LOD200のBIMデータ(IFC形式)を実際に手にしてみる。BIMソフトを買わなくても、無料のIFCビューワーで開くことができる。「BIMデータとはこういうものか」を体験する段階だ。
ステップ4——確認申請に使う(198,000円〜)
BIMデータを理解した上で、実際の確認申請にBIM Expressを使ってみる。意匠モデル(LOD300)の制作を依頼し、IFCデータを受け取って審査機関に提出する。
いきなりソフトを買わなくていい。いきなり全棟でやらなくていい。 1件だけ、49,800円から始めて、段階的にBIMの世界に入っていけばいい。
BIMを「使う」必要はない。「受け取る」だけでいい
自社でBIMソフトを導入すれば、長期的なコストは下がる。年間30棟以上の規模があれば、5年間で1棟あたり約2.4万円まで下がるという試算もある(詳細はBIM外注の費用相場を参照)。
だが、初期投資90万円、習得に半年、設計者の生産性低下——これらを受け入れる余裕がない工務店にとって、自社導入は現実的な選択肢ではない。
BIMを「使う」のではなく「受け取る」。 平面図を送るだけで、BIMデータが届く。自社でBIMソフトを操作する必要はない。
「確認申請のためだけにBIMが必要」という工務店にとっては、外注で受け取るほうがはるかに合理的だ。そして、その外注の入口が建築模型であれば、施主プレゼンの質を上げながら、同時にBIMの土台を手に入れることができる。一石二鳥だ。
「意匠だけBIM」から始められることを知っているか
BIM確認申請に対して「構造も設備も全部BIMにしないといけないのか」という不安を持つ工務店は多い。
実はそうではない。意匠・構造・設備は、それぞれ単独でBIM図面審査を申請できる。 つまり、「意匠だけBIMで申請し、構造と設備は従来のPDF」という組み合わせが認められている。
これは工務店にとって大きな意味を持つ。構造計算や設備設計は外部の協力事務所に依頼しているケースが多い。協力事務所がBIMに対応していなくても、自社が担当する意匠部分だけをBIMで提出すればいい。
BIM Expressが対応するのもこの意匠モデル(LOD300)だ。模型から始めて、意匠だけBIMに進む——小規模工務店にとっては、これが最も現実的なBIM導入パスと言える。
まとめ——BIMの第一歩は、模型1件から
BIM確認申請の準備と聞くと、大がかりな投資を想像する。だが、実際の入口はもっとシンプルだ。
建築模型を1件頼む。 それだけで、3Dデータという「BIMの土台」が手に入る。あとは必要に応じてARやBIMを積み上げていけばいい。段階的に進めても、総額は変わらない。
2029年の原則化に向けて、今からできる最もラクな準備。それはBIMソフトを買うことではなく、次の案件で模型を1件頼むことかもしれない。
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