3Dモデルが欲しい。でも、そこへの道が見えない
施主に完成イメージを見せたい。3Dモデルがあれば説得力は段違いだろう。最近はAR(拡張現実)で建物を実寸で体験できるサービスもある——知っている。
だが、現実はJWCADやAutoCADで2D図面を描くのが精一杯だ。BIMソフトは年間48万円以上する。3Dモデリングを一から学ぶ余裕もない。
「平面図はある。でも、そこから3Dモデルにする手段がない。」
この壁にぶつかっている工務店や設計事務所は、想像以上に多い。
本記事では、平面図から3Dモデルを作る3つの方法を整理し、それぞれの費用・ハードル・活用範囲を比較する。結論から言えば、BIMソフトを持っていなくても、手書き図面しかなくても、3Dモデルは手に入る時代になっている。
方法1:自社でBIMソフトを導入する —— 王道だが、今すぐは難しい
最も正統なアプローチは、Revit、ArchiCAD、Vectorworksなどのビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)ソフトを自社に導入することだ。2D図面を描くように3Dモデルを組み上げ、そのデータから図面・模型・ARまで自在に展開できる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 約90万円〜(ソフト+PC+教育費。1台体制の場合) |
| ランニングコスト | 年間約48万円〜(ソフトライセンス) |
| 習得期間 | 3〜6ヶ月 |
強みは、スキルが資産になること。 習得してしまえば、外注に頼らず自社の手で3Dモデルを自由に作れるようになる。2029年にBIMデータ審査の原則化が見込まれていることを考えれば、先行投資としての合理性はある。
だが、ハードルも率直に高い。
まず費用。最小構成で初年度90万円。設計者2名体制なら170万円を超える。次に時間。BIMソフトの操作習得には3〜6ヶ月の期間が必要で、その間は従来のCAD業務との二重作業になり、生産性は確実に落ちる。
さらに見落としがちなのが、協力業者との連携問題だ。大工、電気、設備の業者がBIMデータを使えない場合、従来のCAD図面も並行して作り続ける必要がある。BIM導入直後は「1棟につき図面を2種類作る」状態になりうる。
自社導入は間違いなく「正解のひとつ」だ。だが、「来週の施主プレゼンに3Dモデルが欲しい」という今日の課題には、応えてくれない。
方法2:3Dモデリングを外注する —— 見た目は綺麗だが、その先に使えない
自社にBIMソフトがなくても、3Dモデリングそのものを外注する手がある。建築パース制作会社、3Dモデリング専門会社、あるいはフリーランスへの発注だ。
| 外注先 | 費用目安 | 納期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 建築パース制作会社 | 5万〜20万円 | 1〜2週間 | 高品質な静止画パースが得意 |
| 3Dモデリング専門会社 | 10万〜30万円 | 2〜3週間 | 精度は高いが建築特化でない場合も |
| フリーランス(クラウドソーシング等) | 3万〜10万円 | 1〜3週間 | 費用は安いが品質のばらつきが大きい |
BIMソフトの導入が不要で、費用もスポットで済む。見た目の3Dモデルとしては、十分な品質が手に入る。
だが、ここに落とし穴がある。
建築パース会社が作るのは「見た目の3Dモデル」であり、BIMデータではない。美しいレンダリング画像は得られるが、確認申請には使えない。ARに転用しようとしても、データ形式が合わずに再加工が必要になることがある。
その結果、何が起こるか。
模型は模型屋に、パースはパース会社に、BIMはBIM代行に ——用途ごとに別の外注先に発注することになる。費用も手間も、そのたびに積み上がっていく。
しかも、それぞれの外注先が別の3Dデータをゼロから作るので、模型とBIMとパースで家の形が微妙に違うという事態すら起こりうる。
方法3:図面を送るだけ —— 3Dモデル化の「入口」が変わった
3つ目の方法が、ここ数年で登場した「図面を送れば3Dモデル化してくれる」タイプのワンストップサービスだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要なもの | 平面図のみ(CADデータ・手書き・PDFのいずれもOK) |
| 納期 | 1〜2週間 |
| BIMソフトの知識 | 不要 |
仕組みは極めてシンプルだ。
① 平面図を送る(CADデータでも手書きでもPDFでもOK)
② サービス側が3Dモデルを作成
③ 形状を確認してもらう
④ 注文内容に応じて、模型・AR・BIMデータを納品
工務店側がやることは「図面を送る」だけ。3Dモデリングのスキルも、BIMソフトも要らない。
この方法の本質的な強みは、模型・AR・BIMが同じデータから生まれること。 複数の外注先を探し回る必要がない。1回の発注で、用途に応じたアウトプットが全て手に入る。
注文内容も段階的に選べる。3Dプリント模型のみ、模型+AR体験、模型+AR+スタディBIM(LOD200)、確認申請用BIM(LOD300)——必要なアウトプットだけを選び、後から追加することもできる。まず模型だけ試して、施主の反応を見てからARやBIMを追加する、という進め方が可能だ。
3つの方法を比較する
| 自社BIM導入 | 3Dモデリング外注 | 図面を送るだけ | |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 90万円〜 | なし | なし |
| 必要なスキル | BIMソフト操作 | 発注管理 | なし(図面を送るだけ) |
| 習得期間 | 3〜6ヶ月 | — | — |
| 入力 | 自社でモデリング | 図面 or 3Dデータ | 平面図のみ(手書きOK) |
| AR対応 | 別途作業が必要 | 別途外注 | 同じデータで対応 |
| BIMへの発展 | ○ | ×(別途BIM代行が必要) | ○(追加注文で対応) |
| データの一貫性 | ○(自社管理) | △(外注先ごとに分断) | ○(同一データから展開) |
年間30棟以上の規模があり、設計業務そのものをBIMに移行する意欲があるなら、自社導入が長期的には最も効率的だ。
だが、「今はまだCADしかない。でも3Dモデルは欲しい」「来月の施主プレゼンに間に合わせたい」 ——そんな工務店にとっては、図面を送るだけのサービスが、最もハードルの低い選択肢になる。
手書き図面しかなくても、3Dモデルは作れるのか?
作れる。
もちろん、CADデータのほうが正確に読み取れるため効率はいい。だが、小規模工務店や個人建築事務所では、手書き図面が現役というケースも珍しくない。
寸法が読み取れる平面図があれば、3Dモデル化のスタートラインに立てる。CADに打ち直す作業は不要だ。PDFに変換して送ってもいいし、スマートフォンで撮影して送っても、入口にはなる。
「うちはまだ手書きだから、3Dは無理」と諦めている工務店があるなら、その前提はもう古い。
まとめ —— 3Dモデルは「特別な会社のもの」ではなくなった
平面図から3Dモデルを作る手段は、この数年で確実に増えた。
BIMソフトを自社導入する正攻法。パース会社に外注する従来の方法。そして、図面を送るだけで模型・AR・BIMまで一気通貫で手に入るサービス。
どの方法にも一長一短はある。だが、ひとつ確かなことがある。3Dモデルは、もはや大手設計事務所や大規模ゼネコンだけのものではない。 年間10棟の工務店でも、手書き図面の建築事務所でも、手が届く価格と手軽さで提供される時代になった。
施主に「こうなるんですね。これで建ててください」と言ってもらえる瞬間。その価値は、模型代の数字をはるかに超える。
3Dモデル化のその先——完成イメージを施主やエンドユーザーに、いつでもどこでも体験してもらいたいなら、もう一つ検討したい選択肢がある。バーチャルショールームだ。
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