工務店が普段使う3D住宅CADで、BIM図面審査の申請データを作れるようになります。ただし審査されるのはPDFの図面で、IFCは「参考」です。
株式会社DTSは2026年9月29日、3D住宅CAD「Walk in home 2026」を10月から順次販売すると発表しました。BIM図面審査に必要なIFCファイルの出力、入出力基準適合誓約書の作成、設計図書のPDF出力に対応します。この記事では、発表の中身を整理したうえで、国土交通省の資料をもとに「工務店にとって何が変わり、何が変わらないのか」を見ていきます。制度の全体像は「BIM図面審査とは(2026年4月開始)」で整理しています。
何が発表されたのか?
原文に書かれている事実は次のとおりです。
- BIM図面審査への対応: IFCファイルの出力、入出力基準適合誓約書の作成、設計図書のPDF出力が、Walk in home上でできるようになります
- Web確認申請への対応: 一般財団法人建築行政情報センター(ICBA)のXMLスキーマインターフェース規定に対応し、確認申請や変更申請のXML形式の書類を作成できます。書類一式を「ICBA電子申請受付システム」にアップロードして申請します
- Walk in home Portalとの連携: 申請データの版管理、変更箇所の差分チェック、IFCデータの3Dビューアでの確認ができます。Portalはクラウドサービスで、利用にはサブスクリプションへの加入が必要です
- 2×4工法への対応: 間取り入力、図面・帳票の出力、壁量計算、入力内容のチェック機能に対応します
- カラー平面図機能: 2027年3月に提供予定です
- 価格: オープン価格(全国の販売代理店により異なる)
原文は背景として、国交省が2026年4月にBIM図面審査を始め、2029年春にIFCデータを審査に活用する「BIMデータ審査」を始める予定だと書いています。
BIM図面審査では、何を出して、何が審査されるのか?
ここは発表文ではなく、国交省の「BIM図面審査 申請・審査マニュアル(初版 令和8年3月24日版)」で確かめます。
提出するものは、確認申請書、入出力基準に従って作ったBIMデータから書き出したPDFの図書、同じデータから同時に書き出したIFCデータ、入出力基準適合誓約書、計算書などです。申請はICBA電子申請受付システムを使うことが標準とされています。
審査されるものは、従来と同じく「図書に明示された事項」です。マニュアルは「図書に明示されていない情報(IFCデータのみに含まれる情報)に基づいた判断は行わない」と書いています。IFCは、審査者が建物の形を早くつかむための参考として閲覧されます。
省略されるものは、図書どうしの整合性確認の一部です。入出力基準に従って1つのBIMデータから書き出した図面は、平面図と立面図の食い違いが起きにくいためです。どこまで省略できるかは誓約書で確認し、審査者の判断で範囲を広げることは認められていません。
国交省の制度説明会資料(2025年12月)は、図面審査とデータ審査の違いを次のように整理しています。
| BIM図面審査 | BIMデータ審査 | |
|---|---|---|
| 開始時期 | 2026年4月 | 2029年春(予定) |
| 審査の対象 | PDFの図書(2D) | IFCデータ(3D+属性情報)と、IFCで審査しない部分の従来の図書 |
| IFCの扱い | 審査対象外(参考扱い) | 審査に活用し、審査に必要な情報を自動表示 |
| 効果として示されているもの | 図面間の整合チェックが不要になり、審査期間の短縮に寄与 | 審査期間のさらなる短縮に寄与 |
同じ資料は、2027年度からIFCデータを活用した審査の対象を順次広げるとしています。
工務店はBIMソフトを新たに買わなくてよいのか?
図面審査に限れば、普段の住宅CADが入出力基準に対応していれば、別のBIMソフトを買う必要は薄れます。 図面審査で求められるのは、入出力基準に従ったデータからPDFとIFCを書き出し、誓約書を付けることです。国交省のマニュアルも、テンプレートは入出力基準を満たせるものなら任意としています。入出力基準の初版(令和8年3月)には木造の基準が加わり、構造では軸組工法と枠組壁工法(2×4)の基準が示されています。
ただし、確かめることが3つあります。
- 自社のCADが対応版か。今回の発表は「Walk in home 2026」です。使っている版が古ければ、更新が必要です
- 費用の出方。本体はオープン価格で、販売代理店によって異なります。版管理や差分チェックに使うPortalはサブスクリプションです
- 入出力基準どおりに入力する手間。CADが対応しても、基準に沿った入力をするのは設計者です。いつもの描き方のままで基準を満たすとは限りません
なお、今回確かめたのはDTSの1製品です。他の住宅CADの対応状況はこの記事では調べていません。お使いのCADについては、メーカーか販売代理店に確認してください。
IFCで何が出て、何が出ないのか?
結論から言うと、発表文とDTSの製品ページからは、出力されるIFCにどの情報まで入るかは分かりません。 推測では埋めず、分かっていることと、確かめる質問に分けます。
IFCまわりで実務がつまずきやすい点は「BIM確認申請の実務で詰まる3つのポイント」でも扱っています。
分かっていること(国交省の資料)
- BIM図面審査で使うIFCのバージョンは「IFC 2.3.0.1 Coordination View 2.0(通称IFC2×3)」とされています。設備については「IFC2×3 設備IFCデータ利用標準 Ver.1.3」も併せて示されています(入出力基準の解説)
- 図面審査では、IFCは審査対象ではありません。IFCにしか入っていない情報は、審査の判断に使われません(申請・審査マニュアル)
- PDFの図書とIFCは、原則として同じBIMデータから同時に書き出します
つまり図面審査の段階では、IFCの中身が薄くても、それだけで審査に落ちることは想定されていません。 審査されるのはPDFの図書だからです。
分からないこと(CADのメーカーに確かめる質問)
- 出力するIFCのバージョンは、国交省の指定(IFC2×3 Coordination View 2.0)どおりか
- 壁・床・建具・部屋などに、どの属性情報が入るか。入出力基準の「属性」に関する基準のうち、どれに対応しているか
- 2029年春のBIMデータ審査で、IFCそのものが審査に使われるようになった時、どこまで対応する予定か
3つめが、2029年を見据えた本当の分かれ目です。図面審査ではIFCは参考ですが、データ審査ではIFCが審査の材料になります。 今の対応が「図面審査のための書き出し」なのか、「データ審査まで見据えた属性の入ったIFC」なのかで、2029年の手間が変わります。
2029年のBIMデータ審査まで、CADの対応で足りるのか?
今の時点では、誰にも断言できません。 国交省の資料が示しているのは、2029年春にBIMデータ審査を始める予定であることと、2027年度からIFCを使った審査の対象を順次広げることです。データ審査で、どの建物にどの属性情報まで求められるかは、これから決まっていく部分です。2026年9月18日に公表された基本構想では、BIMデータ審査と従来の2D図書による審査(BIM図面審査を含む)を併用できるとしています。2029年までの準備の進め方は「BIM確認申請2029年に向けた準備」にまとめています。
当社はこう見ています。BIMは「特別なソフトを買う話」から、「普段の道具の設定と入力の話」に下りてきました。 これまで、工務店がBIM図面審査を試すには、BIMソフトを入れるか、外注するかの二択に近い状態でした。普段の住宅CADが図面審査に対応すれば、「まず1件、図面審査を経験してみる」ことのハードルは下がります。
そのうえで、2029年に向けて見ておきたいのは、CADが「どんな属性をIFCに載せられるか」です。図面審査の1件目は、その確認の場にもなります。自社のCADから出したIFCを、Portalのようなビューアや審査機関の画面で実際に開いてみる。何が入っていて、何が入っていないかを、自分の目で見ておくことが、2029年への準備になります。
工務店が今週確かめる3つ
- 使っているCADの名前と版。BIM図面審査・入出力基準への対応状況を、メーカーか販売代理店に確認する
- 図面審査を1件試す相手。いつも申請している審査機関が、BIM図面審査の受付に対応しているかを聞く
- 誰がPDFとIFCを書き出すか。社内の設計担当か、外注先か。入出力基準どおりに入力する担当を決める(外注する場合の費用感は「BIM外注の費用相場」)
よくある質問
Q. BIM図面審査は、すべての確認申請で必須ですか? A. 必須ではありません。BIM図面審査は、BIMデータから書き出した図書を使う申請・審査の方法です。国交省のマニュアルも、BIM図面審査として受け付けた後に「従来どおりの申請手続き」へ変更する場合の扱いを定めています。
Q. IFCに不足があると、図面審査に通らないのですか? A. 国交省のマニュアルでは、審査は図書(PDF)に明示された事項に基づいて行い、IFCにしか含まれない情報で判断はしないとされています。IFCは審査者が形状を理解するための参考です。ただし、提出物としてIFCは求められます。
Q. 2×4工法の住宅でもBIM図面審査を使えますか? A. 国交省の入出力基準(初版・令和8年3月)には、木造の軸組工法と枠組壁工法の基準が含まれています。お使いのCADが2×4工法で入出力基準に対応しているかは、メーカーに確認してください。
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出典
- 株式会社DTS「3D住宅CAD『Walk in home』2026バージョンを販売開始」PR TIMES、2026年9月29日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000222.000081622.html
- 株式会社DTS「Walk in home」製品ページ https://www.dts.co.jp/solution_sites/walkinhome/ (2026年9月29日閲覧。IFCの出力内容の記載なし)
- 国土交通省 建築BIM推進会議 審査TF「BIM図面審査 申請・審査マニュアル(初版 令和8年3月24日版)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001990519.pdf
- 国土交通省 建築BIM推進会議 審査TF「BIM図面審査における入出力基準の解説(初版)」令和8年3月 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001993983.pdf
- 国土交通省「BIM図面審査 制度説明会」2025年12月 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001972798.pdf
- 国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」令和8年9月18日公表(p7) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002023661.pdf