「AIで間取りって作れるの?」と施主さんに聞かれたとき、工務店はどう答えればよいでしょうか。
AIの間取りは、施主提案の「たたき台」には使えますが、そのまま施主さんに見せる図面にはなりません。 当社で同じ条件を3回入れて試した結論です。3回とも10分かからずに条件どおりの部屋をそろえた案が出て、面積の計算も合っていました。一方で、図は文字のマス目で、構造と配管の手直しはどの案にも要りました。
この記事では、入れた条件、出てきた間取り、合っていた所と直す所を、そのまま記録します。
AIで間取りを作るとは?
AIで間取りを作るとは、敷地・家族・部屋の条件を文章で渡し、AIに部屋の配置と寸法を案として出させることです。
使えるAIは大きく2種類あります。
- 汎用の対話AI: 文章で質問して文章で答えるAIです。間取りは文字や表で出てきます
- 間取り専用のAIツール: 画面で条件を選ぶと、図面の形で間取りが出てきます
今回、当社が試したのは前者の汎用の対話AI(Anthropic社のClaude)です。今回は汎用の対話AIに絞り、専用ツールは試していません。
試した条件:工務店が初回の打ち合わせで聞く内容
入れた条件は、工務店が初回の打ち合わせで施主さんから聞く内容に寄せました。3回とも同じ文面です。
| 項目 | 入れた条件 |
|---|---|
| 敷地 | 間口10m×奥行15m・南側が道路 |
| 家族 | 夫婦+小学生の子ども2人 |
| 建物 | 木造2階建て・総2階・延床30坪前後(約100㎡) |
| 1階 | 玄関(シューズクロークつき)・LDK 18畳以上・浴室・洗面・トイレ・階段 |
| 2階 | 主寝室(ウォークインクローゼットつき)・子ども部屋2室・書斎(3畳程度)・トイレ |
| 寸法 | 910mmモジュール(1マス=910mm) |
| 出してほしいもの | 外形寸法・部屋の一覧・マス目の間取り図・この案の弱点3つ |
最後の「弱点を3つ」は、AIに自分の案を点検させるために足しました。
AIが出した間取り:3回とも別の案が出た
同じ条件でも、3回とも違う間取りが出ました。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| 返ってくるまで | 2分20秒 | 8分6秒 | 4分6秒 |
| 外形 | 8,190×6,370mm | 8,190×6,370mm | 7,280×7,280mm |
| 延床 | 約31.6坪 | 約31.6坪 | 約32坪 |
| LDK | 19畳 | 18畳 | 18畳 |
| 階段 | リビング階段 | 廊下から上がる | ホールから上がる |
2回目には、AIが途中で自分の計算を確かめる手順を挟もうとして止められた時間も含まれています。
当社で、出てきたマス目図を1マスずつ数えて確かめました。
合っていた所:面積と部屋の条件
数字と条件の守り方は、3回とも正確でした。
- 面積の計算が合っていた: 部屋の一覧に書かれたマス数と、図の中のマス数は3回とも一致しました。敷地の余白の数字も合っていました
- 条件の部屋は全部あった: シューズクローク、18畳以上のLDK、ウォークインクローゼット、子ども部屋2室、書斎、2階トイレが3回ともそろっていました
- 階段の位置が上下でそろっていた: 1階と2階で階段が同じ位置にありました。2階の主寝室・子ども部屋・書斎・トイレも、図の上では3回とも廊下(ホール)に接していました(扉の位置は図に無いため、入口までは確かめていません)
- 弱点の申告が具体的だった: 「LDKの上に2階の間仕切り壁が載る」「2階トイレが1階トイレの真上にない」といった指摘は、図と照らすと3回とも当たっていました
初回の打ち合わせの後、条件を整理して「この広さに、この部屋は入るか」を確かめる用途なら、十分に使える精度です。
直す所:施主さんに見せる前に要る手直し
そのまま施主さんに見せるには、次の4つが足りませんでした。
- 図にならない: 出てくるのは文字を並べたマス目です。窓と扉の位置は図に描かれず、施主さんが暮らしを想像できる形ではありません
- 構造と配管の無理が残る: 3回とも、柱のない広いLDKの上に2階の間仕切り壁が載る案でした。2階トイレが1階トイレの真上に来た案は、3回の中にありませんでした。AIは弱点として申告しますが、直すのは設計者の仕事です
- 説明文と図が食い違うことがある: 3回のうち2回で食い違いがありました。1回目は「書斎は階段の北隣」と説明していましたが、図では書斎は階段の西側で、間に廊下とトイレがありました。2回目は「ウォークインクローゼットは主寝室からだけ入る」と説明していましたが、図では2階の廊下にも接していました(こちらは扉の付け方で解消できる軽いものです)。文章だけを読むと間違えます
- 条件より少し大きく出る: 「30坪前後」に対し、3回とも31.6〜32坪でした。3回目はAI自身が「LDK 18畳を確保しつつ、玄関と階段を成立させる最小の正方形」と説明しています
ai 間取りは施主提案でどこまで使える?
当社の結論は、「打ち合わせの前後で設計者が使う下書き」までです。
| 使い方 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 初回ヒアリングの条件整理 | 使える | 条件が面積に収まるかを数分で確かめられる |
| 設計者の検討用のたたき台 | 使える | 毎回別の案が出るので、配置の選択肢を並べられる |
| 弱点の洗い出し | 使える | 構造・配管・収納の指摘は図と合っていた |
| 施主さんにそのまま見せる | 使えない | 図面の形になっておらず、構造の手直しも要る |
施主さんに見せるのは、設計者がAIの案を描き直し、構造と配管を確かめた後の図面です。AIが速くするのは、その手前の「考える時間」です。
工務店がAIで間取りを試す手順
当社で試した手順を、工務店がそのまま真似できる形にまとめます。
- 条件を表にする: 敷地の寸法と道路の向き、家族構成、延床、各階に欲しい部屋、モジュールを書き出す
- 出してほしい形を指定する: 「外形寸法・部屋の一覧・マス目の図・弱点3つ」のように、出力の形を決めて頼む
- 同じ条件で2〜3回出す: 毎回別の案が出るので、並べて比べる
- マス数を数えて確かめる: 部屋の一覧と図のマス数、上下階の階段の位置、トイレと水回りの上下を確かめる
- 説明文ではなく図を正にする: 文章と図が食い違ったら図を信じ、設計者が描き直す
施主さんの名前や住所など、個人の情報はAIに入れないでください。条件は寸法と部屋の希望だけで足ります。
よくある質問
Q. AIで間取りを作るのに、専用のツールは要りますか?
条件の整理とたたき台までなら、当社の試行では汎用の対話AIで足りました。条件を文章で入れ、文字のマス目で受け取る形です。図面の形で出す間取り専用のツールは、今回は試していません。
Q. AIの間取りをそのまま施主さんに見せてよいですか?
おすすめしません。当社で試した3回とも、構造と配管の手直しが要る案でした。図は文字のマス目で、窓と扉の位置もありません。施主さんに見せるのは、設計者が描き直した図面にしてください。
Q. 同じ条件で頼むと、同じ間取りが出ますか?
出ません。当社では同じ文面で3回頼み、3回とも違う間取りが出ました。外形が正方形になった回もあります。比べる材料が増えるという意味では、何回か出す方が役に立ちます。
Q. AIの間取りは面積の計算が合っていますか?
当社の3回では、部屋の一覧と図のマス数は一致していました。ただし説明文の位置関係が図と食い違った回が2回ありました(1回目は書斎の位置、2回目はウォークインクローゼットの入口で、2回目は軽いものです)。数字は確かめやすいので、必ずマス数を数えて照合してください。
Q. どんな条件を入れればよいですか?
敷地の寸法と道路の向き、家族構成、延床面積、各階に欲しい部屋、寸法のモジュールの5つです。「この案の弱点を3つ」と頼むと、AIが構造や配管の気になる点を自分で挙げます。
まとめ
- AIの間取りは、条件どおりの部屋を数分で並べ、面積の計算も合っていました
- ただし図は文字のマス目で、構造と配管の手直しが3回とも要りました
- 施主提案では「設計者のたたき台」として使い、施主さんに見せるのは描き直した図面にするのが安全です
当社では、AIで間取り・内装・パースを作る道具を、工務店の仕事で実際に試して記録していきます。